第17怪『その後のオイラ・オミクロン』
- 2022.01.27
- 未分類
- TEARDROPS, THE BEGGARS, THE FOOLS, ウィスキーズ, オミくろん, カノン, シーナ&ロケッツ, ジョージ, よもヤバ話, ローリンストーンズ, ロックバンド, 山口冨士夫, 藻の月, 青木真一, 高円寺, 高円寺バンド, 鮎川誠
朝早くから電話が鳴った。
「…あんだよ!」
なんてぼやいたかどうかは覚えてないが、
ファックス兼用の受話器をとる。
「kasuyaさんですか?」
「はい」
「アナタのクリニックです。結果から言うと陽性です。熱はありますか?」
「……あっ、ないです」
「どんな様子ですか」
まだ夢の続きをみているような気がした。
この滑舌の良い女医さんは
実にあっさりと真実を告げてきた。
そりゃあそうだろう、
格別にもったいつけても仕方ないのだ。
″まさかオイラがオミクロンになるなんて!″
やわな心の中で
小さな自分が泣き崩れている。
「喉少し痛いです。咳はないし倦怠感も治ったし、それでもそうなんですか?」
(我ながら言っていることが少し変だ)
「陽性です。保健所から連絡が入ると思いますが、しっかりと療養してくださいね」
「嫌だね!」
と、心で思いながら、
「はい」と答えていた。
ほんとうに僕は気が小さいのだ。
ベッドに戻りもう一眠りしようと思ったが、
それどころじゃないような気がした。
MAKIの荷物も整理したし、
ノンちゃんの里親も決まって、
″もうお前には用がないわ!″
って閻魔大王がオイラを
踏んだり蹴ったりしているのだろうか?!
「そりゃあ、あんまりだべ」
そのうち、妻が起きてきて、
「誰かと話してたか?」
と聞いてきた。
「陽性だって。アナタのクリニックが連絡してきたんだ」
「やっぱり」
と、妻はさりげなく言うと、
「ついにオミクロンが身内に出たか」
と、感慨深げである。
しかしながら、実際に辛かったのは
病院に行く前の2日間であった。
朝起きて、喉がイガイガする季節だし、
そんな当たり前の症状の
30%以上がオミクロンだなんて知らないから、
仕事に出かけたら倦怠感がきた。
たまらず夕暮れに家に戻り、
妻がジィーっと観察する前で飯を食い、
(腹は減り、食欲はある)
熱い湯に入り寝床についた。
熱はなかった。
咳もなく、喉も痛くないのだ。
ただ、倦怠感はある。
それだけなのである。
なんだか寝付けなかった気がする。
起きたら頭が痛かった。
倦怠感と頭痛である。
病院に電話をしたら
発熱外来は受け付けていないという返事。
(多分、うまく訊けてなかったのだと思う)
「熱はないんです」
っと言ったら余計に受けつけてくれなかった。
たぶん風邪だな、って思うことにする。
熱もないし喉も普通で咳もない。
娘が帰宅して来て、
バッファリンを勧められる。
薬は勧められると飲む習性があるので、
飲んでみたら見事に頭痛が消えた。
その夜は異常な寝汗をかいた。
うなされた気もする。
その日の昼過ぎに
病院『アナタのクリニック』に行くことにした。
自転車に乗れるほどに治りつつあるこの身を
お日様に照らしながらの
自信溢れる通院だったのである。
「風邪薬もらえますか」
「どうしましたか?」
見たことのない若い看護師が
待合室前に立ち塞がり対応にあたる。
「昨日電話でも話しましたが、熱もなく咳もなく喉も違和感程度で、風邪のひき始めかも知れません」
「ちょっとお待ちください」
間もなくして、いつも診てくれる
ベテラン看護師が現れ、
「kasuyaさん、夕方の発熱外来で出直してくれますか?」
と言われた。
「発熱外来は受け付けていないと言われたんだけど」
と答えると、
「それは初診を受ける患者さん。kasuyaさんは基礎疾患を持ったウチの患者さんだから、いつでも大丈夫ですよ」
「だけど、熱もないし」
「という症状も聞きましたけど、オミクロンは無症状が多いのよ。夕方来れる?来てね」
と、言われたのである。
こんなに積極的な″来てねコール″は久々である。
(当然、あまり嬉しくはない)
寒々とした夕暮れ時の6時前、
再び自転車で病院に駆けつけた。
たんたんとPCR検査をしてもらい、
風邪薬をもらう。
「いま、検査が混んでるから、結果は明後日の連絡になります」
という事があり、
冒頭の電話を受けることになるのである。

…………………………………………
そんなわけで、
10日間の隔離生活が始まった。
「kasuyaさんは基礎疾患(高血圧)があるから、本来なら入院していただくかホテル療養なんだけど、どちらも空いてなくて」
主治医の滑舌の良い女医さんから電話があり、
感染後の指示があった。
「家でいいです。ウチでおとなしくしています」
「そぅお!?大丈夫そうね!それじゃあ、何かあったら連絡くださいね、お大事に」
通常の診察より優しい声であった。
いつもそうであって欲しいと思う。
そんなわけで、
オミクロン人間の日々が始まった。
妻と娘は濃厚な接触者である。
保健所のAIから朝9時と午後2時に
接触確認アプリが飛んでくる。
熱と酸素濃度の数値、気持ち悪いか、頭痛は?
ふらふらするか、食欲はあるか?
下痢は?顔色はどんな感じ?などと
とめどもなく聞いてくるのだ。
それが、ヒョイと見逃すと、
すぐに留守電に行ってしまい
どうしようもなくなる。
コレはコレでストレスのような気がした。
加えて、ウチは電波が悪い地域のようで、
こういった機能には向かないのである。
日曜になって保健所から電話があった。
(発症から7日目、検査から4日目、陽性確定から2日目であった)
症状やらを時系列で説明して、
発症日と10日目の
ポイントになる日を設定した。
「申し訳ありませんが、病院もホテルも空いてなくて」
と、また言われた。
「大丈夫です。熱もなく、喉も痛くなくて咳もでませんから」
という説明を何十回しただろうか、
ただ、基礎疾患があるというのは
感染症に対して
大きなリスクであることは痛感する。
「それでは、何かありましたら」
と、保健所の綺麗な声をした女性は、
緊急連絡先などを流れるように言い残し、
iPhoneの向こうに消えていった。
別に何がどうという苦痛もなかったが、
なんとなく横になると楽だ。
時々不意に咳き込み、
びっくりすることがあるが、
たいしたことではない。
軽い頭痛もするが、
そんな時は喉の違和感もある気がする。
とにかく、どうってことはないのだ。
PCR検査さえしていなければ、
あのまま街を出歩いていただろう。
このぐらいの不調なら
これまでに腐るほどある気がするのだ。
ということは?!

…………………………………………
発症日をゼロとして、
今日で10日目の朝を迎えた。
何事もなく、穏やかである。
トイレまで行くのに
壊れたロボットのようだった自分が嘘のようだ。
なんならスキップでも踏んでやろうか。
そんなお調子者の自分を、
最近現れた慎重派の自分がいさめる。
昨夜も不意に咳き込んだりした。
軽い頭痛もあったのだ。
侮ってはいけないのである。

…………………………………………
リハビリのために公園を散歩した。

外に出るのは実に久しぶりなのだ。
我が友“レイカ”の年末占いでは、
今年は“停滞していたことが動き出す年”だという。
確かに動いてはいるが、
今のところ、けっこう苦行のいばら道を歩いている。
“こんなんで大丈夫でしょうか?”
と、“レイカ”にメールしたら、
不可思議な絵文字の羅列が返ってきた。
相変わらず可笑しな奴だ。
大丈夫、僕は“レイカ”を信じているのだ。

ところで、今は、
200年に一度の転換期だといわれている。
“土の時代”が終わり、
“風の時代”がやって来たのだとか。
(西洋占星術)
“土の時代”は物質の時代であったが、
“風の時代”は、風が目に見えないように、
情報や知識などの形のないものが重視され、
想像力、思考力、柔軟性が必要になってくるのだとか。
「頑張るのはもうおしまい!」
そう笑い合いながら、
自由で多様性のある仲間たちと、
楽しく踊り暮らす世になるのだろうか。
このような大きな時代の転換期に
新型コロナウィルスが登場したのも
単なる偶然ではないのだろう。
とにかく、既存の価値観を壊し、
風のようにしなやかな発想で
生き方を変えていく勇気が
試される時だと想うのだ。
そんなことを考えながら、
池面に映る夕日の姿を見ていたら、
なんだか肌寒くなってきた。
いかに風の時代といえども、
まだまだ北風は冷えるのである。
どなた様もご自愛くださいませ。
オイラのオミクロン、
無事に終了いたしました。
(2022/01/27)

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