第20怪『サブスク』

第20怪『サブスク』

2年も前の話になる。

藻の月のレコーディングのとき、
その時点で急遽参加することになったレンに、

「サブスクはどうするんですか?」

と訊かれて、

「やるよ」

と反射神経で答えたのだが、
″サブスクってなんだっけ?″
と思った。

その時点で、脳内に記憶している
単語ではなかったのである。
(笑ってください😂)

急ぎネットで調べてみたら、
いつも利用している音楽や映像の
定額配信サービスのことではないか。

「もちろん、やるよ!」

再びレンの近くに行き、
これみよがしに答えたのであった。
(レンは″なんでまた言う?″という顔をしていたが…)

サブスク、正式にはサブスクリプションである。
我が稚拙な脳内で『定額サービス』という単語から
そっと置き換かわるのであった。

そのレコーディングも無事に終了し、
アレコレとCD発売のプランを練ったが、
コロナの影響が強すぎて
思い通りにはいかなかった。

LIVEもドカンとやりたかったのだが、 
なんだか軌道に乗らない感じであった。

本来ならいまごろ『藻の月』は
ミュンヘンにいるはずだったのだが、
どういことだろう?
というのはフカシ過ぎだが、
何か楽しいことを
仕掛けたいと想っていたのだ。

しかし、それは僕等だけではない。
世界中が軌道修正を課せられているのである。

……………………………………

さて、サブスクリプションだが、
現在はあらゆる種類がある。
音楽や映像はもとより、
スポーツ観戦なども
手軽に見られるようになった。

サッカー好きの身としては
DAZNなどで世界中の主だったリーグ戦が
見られて嬉々としていたのだが、
ここにきて突然の値上げ。

まさにオーストラリア戦を
見ようと言う段階での
150%の値上げにとても困惑した。

サッカーだけに視聴者の
足元を見たわけではないだろうが、
あまりにも露骨で嫌味であった。

しかし、そんな障害も跳ね除けて
日本サッカーはWC出場を勝ち取った。

この感激を誰と分かち合おうか、
天国でゴールを守っている
冨士夫でも呼び出して、
とっておきの日本酒でも煽ってみようか。

冨士夫はサッカー部出身である。
どういうわけかキーパーであった。
出場した全ての試合で
「1点も入れさせたことがねぇんだ」
とよく嘘をついていた。

酔っ払うとご機嫌になって
自らの話をするのに夢中になる。

もう12年も前になるだろうか、
WCの真っ最中に
どこの試合だったか忘れたが
冨士夫の家で大事な試合を観戦していた。

「それでな、そのときチャー坊がな」

冨士夫はいつものように酔っている。
晩年は村八分の話をする事が多くなっていた。

その時は確か吉田くんも居たと思う。
冨士夫の話に耳を傾けながら、
″なんだよ、そこはシュートだろ!″
なんて楽しくやっているときだ。

「俺の話よりサッカーのほうが大事なのか!」

突然に大魔神(古いか)に変身した冨士夫が、
ブチッとテレビの電源を切り、
小学生のようにふてくされた。

「なんだよ、そんなんじゃねぇんだよ、冨士夫の話もちゃんと聞いてたじゃねぇか」

吉田くんが、突然の暴挙に意を唱えた。

「そうだよ、冨士夫の村八分の話がもっと聞きたい!」(だからテレビもつけて…)

僕もできる限りの媚びを売ったのだが、
その夜のワールドカップが
2度と我々の目の前に現れることはなかった。
激オコキーパーがテレビのリモコンを死守して、
突然の観戦終了を宣言したからである。

……………………………………

さて、サブスクの話だ。
 
少し前まではプラットホームとかいって、
さまざまな音楽や映画が 
そこに集められ始めたとき、
作品に関する価値観の矛盾を感じた。

独自にモノを選んで楽しんできた世代としては、
自らの価値観に身銭を切ることに
喜怒哀楽を感じていたからである。

それが、まったく変わってしまったのだ。

″あなたの好みの音楽を集めました″

頼んでもいないのに
ダウンロードした音楽を分析したAIが、
勝手に押し付けコーディネートをしてくる。

私たち個々の情報は管理され、
あらゆる行動も趣味趣向も分析され、
カテゴリー別に分けられている。

ちなみに僕はどんな部類に入るのだろうか?
なんて考えても仕方ないのだが、
僕ら自身の人生そのものが
どこかで大きなサブスクに入っている
ような気がして仕方ないのである。

AIが選んだ今日の僕は、
紺色のジャケットを着てジャズを聴き、
新宿でタイ料理を楽しんでいる。
なんてね、知らずのうちに
導かれているのかも知れないのだ。

ちなみに『藻の月』もサブスクを始めた。
アルバム『casualismus』だけではあるが、
何はともあれ試してみたいと思っているのである。

そして、明日は年明け初のステージ。
サブスクリプションでは感じ得ることのない、
生身の藻の月を体感していただきたい。

マンホール、RANGSTEEN共々、
是非ともお待ちしております。

(2022/03/26)

3月27日(日) 高円寺ShowBoat
18:00 open 18:30 start
前売2500 当日2800

藻の月
マンホール
RANGSTEEN

4月は国立・地球屋です