第11怪『プライベート・カセットからRenのスタジオ作りまで』

高校生になりたてのころ、 音楽好きだった僕は ティアックのオープンデッキを持っていた。 自慢の4チャンネルである。 最初のころはひとりで 多重録音をして遊んでいたのだが、 すぐにネタがつきてしまい、  宝の持ち腐れになってしまった。 終いには試験前の睡眠学習を思い立ち、 多重録音で教科書を 朗読した […]

第10怪『トビー』

ジョージ秋山が描いた 『浮浪雲』っていう漫画があったけど、 トビーを想うとき、 僕はあの世界を想像する。 別に彼はあんな風に 女ったらしでもなければ、 カッコつけでもないのだが、 なんだか浮世離れしているのだ。 苦い現実を受け入れながらも、 そこに角砂糖を入れて掻き混ぜ、 ひょいと、コチラに向き直る […]

第9怪『伊藤耕の誕生日』

台風明けの土曜日、 カラッとした秋晴れの公園は、 人々のはしゃぎ声で溢れていた。 その合間を自転車で走る。 季節変わりの風を感じて 空に目を向けると、 水分が抜けて変色した葉が、 まるで枝にしがみつくように 頭上で揺れているのが映った。 人生の景色に例えたら、 いまの自分はこんな風かしら? 最近はそ […]

第8怪『秋のウロコ雲 “大人のラジオ” 』

9月に入ったら突然に秋めいてきた。 今みたいな季節の変わり目は、 朝晩がやけに涼しくなり、 寝ぞうのわるい人間は 風邪気味になるというパターンが多い。 つまり、オイラである。 朝起きると喉がかすかに痛かった。 隠したいほどではないが咳もでる。 そんな起き抜けのゾンビを見て、 家族がざわついた。 「あ […]

第7怪『夏の終わり2021』

毎年、夏が始まるときには、 沸き立つような波の景色を想像する。 鳴きはじめた蝉の声にワクワクとし、 思いがけないほどの 陽気な時間に出逢う気がするのだ。 それに比べ、夏の終わりは妙にもの寂しい。 想いもしなかった哀しみを呑み込んで、 静かに波が引いて行くのを眺めたとき、 何もかもが終わっていく気がす […]

第6怪『タクシーの車窓から』

少し『藻の月』軌道をそれた話をしてもいいだろうか。 母親が突然に逝った。 「さよなら」もなくである。 ふいに頭を殴られたらこんな感じだろうか。 いつもと同じ週末が、 長く暗いトンネルのように思えた。 その暗がりから抜ける時、 色々な想いがよみがえってくるのだ。 そもそも母親は全てにおいてコチラの味方 […]

第5怪『ヤスイくんとマエダくん』

マエダとヤスイが混じり、 グチャっと打ち上げるのは久しぶりだった。 そこにコイワイが入ると ほとんど『我が家』の気分でもある。 世間はまた緊急事態宣言である。 不平等で不自由な日々が強いられる。 それでも、  先月の『藻の月/ShowBoat』の 打ち上げの時点では、 まだマンボウだったこともあり、 […]

第4怪『WCとパクチー』

人生で初めてパクチーを食したのは、 石黒の経営するBAR『WC?』だった。 (店の名前が『WC?』だったので、よくトイレと間違えて入って来る客もいた。まぁ、軽いジョークなんだろうけど…) もう30年近く前のことである。 夜遅く1人で行った時に、 「はら減ってねぇか?」 と気を利かせた石黒が 出してく […]

第3怪『原宿クロコダイル』/夢の跡

ウチの裏には城跡がある。 遠い昔、太田道灌に壊された夢の跡だ。 今ではカラスの城になっていて、 深い樹木の中から 絶え間なくカラスの鳴き声がする。 血気盛んな子供の頃は、 城跡の坂を使って自転車を転がした。 中学の終わり頃は 樹々の陰で煙草をふかし、 高校生ともなるとトリップするのに ちょうどいいス […]

第2怪『ルージュ』The Ding-A-Lings

21歳のときだったと思う。 仲間たちと多摩美の学祭に行った。 八王子から横浜線に乗り 橋本駅で降りると、 多摩美に通う女子が出迎えに来ていた。 そのとき僕らは何人で行ったのだろう? グループで行ったので、5、6人はいたと思う。  僕はその中の1人と付き合っていた。 多摩美女子の住むアパートで 雑魚寝 […]

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