第1怪『ものつきばなし』をはじめようか

第1怪『ものつきばなし』をはじめようか

30年振りにバンドのマネージャーになった。

いや、金にはなってないから
一緒に活動させてもらっている人になった、
とでも言えばいいのだろうか。

プロデューサーといった方が
聞こえが良いような気もする。

しかし、俺自身そんなに音楽性が
豊かなわけでもないから、
言うたびに恥ずかしい思いをするだろう。

だったら俺はなんなんだ!?
…である。

30年前もそうだったが、
適当な言葉が見つからない。

しかし、これだけは言える。

“楽しいのだ”

それは、
経済の方向から考えてないからかも知れない。
真剣に切羽詰まってないのである。
年をくったぶんだけ自意識がゆるい。

…のである。

「年末は武道館を目指している」

と言ったら、家族に無視された。
このところ、ジョークも揺れるのだ。

少し間があり、

「渋公(渋谷公会堂)か、中野サンプラあたりにしておけば」

と言う妙な気遣いをいただき、
つまらない冗談で、
家族を心配させているのではないかと
気になったりもするのである。

「ドイツでライヴしたい!」
と、ドラムのカノンは言う。

ドイツの何処に行けばいいのだろう?
ミュンヘンか?
フランクフルトか?
ザルツブルグか?
どーしてもブンデスリーガしか思い浮かばない。

ルー・リードのように
ベルリンに行けば良いんだな。

と思って本気で考えてみようと思っていたら、

「台湾でPVを撮りたい!」

と今度は言い出した。

そうね、
色々と行きたいわけね。
そう思い、
まずは国内から考えることにした。
京都、大阪。
神戸、名古屋は可能性があればだな。

沖縄には行きたいと思う。
友が客を集めてくれるだろうから。

さて、
そんなこんなを考えることが最近は楽しい。

『藻の月』だから、
満月の夜にライブしようと半ば強引に決め、
もう7月までブッキングしてあるのだ。

「あまり、調子に乗って先走らないでね」

エミリから苦言メールをいただいた。

実にそうなのである。
30年前は冨士夫が並走してくれ、
素人考えを盛り上げてくれた。

今回はジョージだ。

まぁ、ジョージも優しいから大丈夫だろう。
なんちゃってね、

それでは、とにかく始めようと思う。

月の夜の『ものつきばなし』を。

奇人変人渦巻く世の中の、
めくるめく日々の話なのである。

(2021/04/04)