第14怪『S盤アワー/クリスマス・イブの夜に』

第14怪『S盤アワー/クリスマス・イブの夜に』

S盤アワーは日本文化放送協会
(文化放送/ラジオ)が、
1952年(昭和27年)4月の開局当時から
1969年(昭和43年)11月までの17年間に渡り
深夜に放送された長寿音楽番組である。

S盤とは、日本ビクターレコード
洋楽S盤レーベルの略称で、
当時発売された洋楽の新譜を
帆足まり子さん(ほあし まりこ)の軽快な
DJで紹介するというものであった。

番組立ち上げ当初は、
ビクター専属の某女性歌手が
DJを務めるはずだったが、
歌手とDJの掛け持ちに反対する声が上がり、
急遽、入社したばかりの彼女(帆足まり子)が
DJに抜擢されたのであった。

当時はテレビよりもラジオが大人気で、
特に深夜放送は10代の必須アイテムだった。

オールナイトニッポンや
パックインミュージック、
そして文化放送はセイヤング。
僕らは勉強をするフリをして、
実は欧米のロックに妄想を膨らまし、
DJの軽快なトークを楽しんでいたのである。

S盤アワーは、当時10代だった年代なら
誰でも一度は聴いたことのある番組なのだが、
いま、改めて聴いてみると、
さりげなく脳裏に刻まれていたことがわかる。

帆足まり子さんは、
番組が終了した69年以降メキシコに渡り、
本格的にラテン歌手に転向したという。

夫は同じくラテン歌手の三村秀次郎。
『マリキータ&ジロー』というデュオで、
『スペイン語会話(NHK教育)』に
レギュラー出演していた事もあるという。
また、『日本ラテンアメリカ文化交流会』
の会長も務めたのだとか。

私生活でいえば、
帆足まり子さんは’56年(昭和31年)
に男の子を産んでいる。
その子が誰あろう、帆足祥彦。
つまりトビー(The Beggars)なのだ。
ということは、トビーは、
ビクターに務める有名DJの母親に育てられ、
″13歳のときにお母さんはメキシコに行っちゃった″
という少年時代をおくったことになる。

彼の寂しがり屋は
こんなところからくるのかも知れない。
彼のマニアックなほどの音楽好きは、
母親の面影と重なるのである。

想像してみよう。
深夜に流れる母親の声を聴いている
トビーの子供時代を。
日曜の深夜1時、
ラテンのリズムと共に母親が現れ、
洋楽SPレコードをかけるのだ。
(SP→プラスチック材に溝を刻んだLP)

生まれてから中学生になるまで、
日曜の深夜は母親のかける
音楽を聴いて育つ。
そして、やっと番組のリスナーだった
若者に仲間入りする頃、
母親はメキシコへと旅立つのだった。

トビーの持つ楽天的な明るさと、
現実感のないバランス感覚や、
あやういほどの優しさは、
きっとこんな経験からくるのかも知れない、
と僕は想像するのだ。

あまりに早く逝きすぎではあったが、
トビーは先日の納骨で、
やっとラテン系の愛おしい母親と
一緒になることができたのだ。

きっと今ごろは、
『マリキータ&ジロー』の
ラテンのリズムに混じって、
ベースを斜めに弾いていることだろう。

そんなトビーをノリノリにのせるために、
追悼のイベントを企画した。
今度の日曜日、
12月26日のShowBoatである。

もう一度だけトビーを呼び戻して、
音の世界で騒ごうと想うのだ。

もう一度だけみんなで会って、
大好きな母親のもとに送り出してあげたい。

ほんとうに信じられない偶然なのだが、
奇しくも翌12月27日は、
帆足まり子さんの命日なのである。

きっと、ラテンのリズムで
迎えに来てくれるのだろう。

“Merry Christmas TOBY、
そっちでも楽しんでいるかい? 明後日 会おうね!”

S盤アワー OP ED 1959年/DJ帆足まり子さん

(2020/12/24 クリスマス・イブの夜に)

日本ローリング・ストーンズ F.C PRESENTS
STONES NITE Vol.14
帆足“TOBY”祥彦 追悼 LIVE!!
2021.12.26(Sun) 高円寺ShowBoat
0pen 16:30 /Start 17:00 Add ¥3500/ Day ¥4000
出演 
◼︎THE BEGGARS BANQUETS
Vo.佐藤ケンジ/Gt.Joe Kids/Gt.聖/Ba.Motoaki Sano/Dr.阿部孝宣/Key.Akihi Saito
Guest:加納秀人(外道)/市川“James”洋二(ex.Street Sliders)
HAMA(THE BEGGARS)/鈴木達哉(THE BEGGARS)/中井俊樹(ex.THE BEGGARS)
◼︎藻の月
◼︎THE JAYPERS
◼︎NICKEY unit(w/CROSS,KATSUJI)
◼︎The Cross Fire Hurricane
◼︎Get&Stand Ups
MC: 池田祐司(JRSFC会長)