第41怪『ジョージのバースデー』

第41怪『ジョージのバースデー』

某出版社の noteに
ジョージのことを書き始めた。

それで気づいたんだけど、
実はジョージのことを
あまりよく知らないのだ。

『ウイスキーズ』からの付き合いだから、
記憶の中に30歳そこそこの自分が思い浮かぶ。
その横でやたらと背の高い
ハンサムボーイがはにかんでいる。

照れ隠しなのか、
ブラックジョークの裏返しなのか、
″笑顔″はジョージの専売特許だ。

「はっはっは!」
と言葉をケムに巻いたかと思うと、
いつも何処かに行ってしまう。

大袈裟ではなくそんな風なのであった。

あの頃の僕らはいったい
どんな会話をしたのだろう?
僕よりも幾つか歳下のハーフのギターリストは、
寡黙でシャイないでたちで、
いつも少し遠くにいるイメージがあった。

…………………………………………

冨士夫が突然の旅?に出て、
唖然としているタイミングで
青ちゃんから呼び出された。

吉祥寺の喫茶店に出向くと、
青ちゃんと佐藤ケンちゃん(S/E/X Rec.)が居て、
いきなり″レコードを出す″と言う。

バンド名は『ウイスキーズ』で、
これからお披露目のLIVEを曼荼羅で行うのだとか。

間も無くして彼らに付いて会場に行くと、
店内は意外なほどの熱気に溢れていた。
それは、『タンブリングス』の緊張感のある空気感とも、
『フールズ』のやたらとルーズな開放感とも違っていた。

うまくは言えないが、
ちょうど良いグルーヴ感が
この会場にはあったような気がした

バンドに付き合ってLIVEに接していると、
つくづくこの空気感の大切さに気がつく。

冨士夫に付き合うと、
興奮と緊張に心が挟まれるのだが、
その間で固まったままになっている
客席からのリアクションは少ない。

コウ(伊藤耕)に付き合っていると、
フリークになった客が
ステージにまで上がってくる時があり、
境のなさすぎる解放感に少し白けたりした。

そう思いながら『ウィスキーズ』の
ステージに目をやると、
青ちゃんの横にひときわ背の高い人物が映った。
それが、ジョージだった。

こんな言い方もなんだが、
アクの強い冨士夫やコウとは違い、
ジョージと横並びになっている青ちゃんは、
ちょうど良い存在感に映る。

″コレは格好良いな″と思った。

フロントの2人のバランスが良い。
微妙に音程のズレたヴォーカルが、
なんともギタリストらしく、心に届く。
それを1曲ごと交互に演るのだ。

その後ろで、
″減量した三多摩地区のスティーヴン・タイラー″
(のような顔をした)宮岡が、
独特のベースを響かせている。

それを受けているのがマーチンのドラム。
『フールズ』とは明らかに違う、
フリークなビートでスウィングしていた。

″バラバラなのに、まとまっている″
そんな感じなのである。

気がついたら、
すっかり客たちに溶け込んで
身体を揺らしている自分がいた。

いつの間にか、ただの客になっていたのである。

そもそも、
バンドの全容も理解していないのに、
マネージャーになるなんてのが
どうかしているのだ。

「バンドを作ったんだ」と言う青ちゃんに対して、

「観に行くよ」と返すと、

「何言ってんだよ、そのバンドのマネージャーなんだよ、トシは!」

というやり取りが少し前にあり、
改めて″そうなのか″という思いでそこに行った。

それがLIVEの終了後には、
すっかりマネージャー気取りなのであった。

「おつかれぇ!」

とメンバーに声をかけ、
初対面だった(レーベル代表の)佐藤ケンちゃんに対して、

「どのように進めていきましょうか?」

と、今後の『ウイスキーズ』を問いかけていた。

あの頃の僕は、
小さな嘘と根拠の無いプラス思考が、
無数に集まってできている人間だった。

そんないい加減なオイラを見て、
ジョージはいったいどう思っただろう?

今さらながら考えるところである。
(…が、もう遅い…)

…………………………………………

月に一度ある『ウイスキーズ』のLIVEは、
僕にとっても楽しみなイベントであった。

客はどこでもいっぱいになっていた。
なんの宣伝もしていないのに不思議だった。

どこかの見知らぬBarで、
ウイスキーを飲みながら横に揺れているような
そんな気分だったのかも知れない。
愉しい時間はあっという間に過ぎるものだ。

冨士夫が予定通り1年間の旅から戻ると、
『ウイスキーズ』の活動もストップした。

『ウイスキーズ』ライヴの最後の方には、
ボウズ頭の冨士夫がゲストで加わるという
リハビリ付きだったのである。

遅咲き青ちゃんはその後、
『ウイスキーズ』で得た勢いのままに、
『TEARDROPS』で開花していった。

ジョージは宮岡と共に、
オス(尾塩雅一)やキヨシ(中村清)と『Canon』を作り、
活動していくこととなる。

僕とジョージとの付き合いはソコまでだった。

…………………………………………

20年近く前になるだろうか、
再び冨士夫と関わることになってから、
ジョージともまた接し始めた。

LIVEのシーンで会っては挨拶を交わした。

冨士夫のラスト・ステージもジョージと一緒だった。
『藻の月』には縁があったのだ。

その時からさらに月日が経った。

それで気づいたんだけど、
僕はジョージのことをあまりよく知らないのだ。

ずうっと昔からの顔見知りなのに、
横顔を眺めているだけだったのかも知れない。

近々、そんなジョージの
あんなこと、こんなことを
書きまとめようと思っている。

同時に、
愉しかった日々を思い起こした、
『ウイスキーズ』もお聴かせできるかも。

いや、お聴かせいたします!

でも、今はまず、明日の夜、

『月見ル』ステージに現れる
ジョージを祝ってあげてください。

“Happy Birthday George!” って!

(2023/0501)

PS

5/2 Thu 青山『月見ル君想フ』
“MOONTRIP”

-LIVE-
藻の月″George’s Birthday”
すばらしか
ねたのよい
and I

-DJ-
RadioJakarta
H.E.W.$

¥2500+1d
18:00open 19:00start